北朝鮮リスクで株安・円高が進んでいますが、北朝鮮リスクというのは、毎回毎回「リスク回避の株安・円高」⇒「リスク後退による株高・円安」(戻しているだけですが。)の流れを繰り返しています。
(四六時中同じことを言っている気もしますが)一部の銘柄はそろそろ買ってもいいかなというところまで値下がりしており、為替に関しても108円台が固いと考えるならこのあたりで多少ドル転するのもありではないかと考えています。
しかしながら、さすがに戦争は始まらず適当なところで落ち着くだろうと思いつつも、今回の状況はこれまでとは異なり、より深刻な事態につながりかねない、という論調もありますので、例によって取るべき行動を判断しかねてグズグズしていました。
そんななか、休職中の身を活かして、上下巻で800ページにおよぶ、ナシーム・ニコラス・タレブの「反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」を読んでいたら、次の一節がありました。
私たちは、飛行機の搭乗前に乗客が武器を持っていないかをチェックする。それは、乗客をテロリストだと思っているからだろうか?違う。乗客がテロリストだということは、まずない(微小な確率だ)。それでもいちおうチェックするのは、私たちがテロに対して脆いからだ。ここに非対称性が存在する。私たちはペイオフに着目する。さっきの命題が「正しい」(乗客が本当にテロリストである)場合の影響、つまりペイオフはとんでもなく大きいが、チェックする費用はごく小さい。
原子炉は来年爆発するだろうか?ノーだ。でも、「イエス」という仮定で行動し、安全の強化に数百万ドルを費やす。私たちは原子力の事故に対して脆いからだ。
机に座って、ここ1週間(できれば今までの生涯)で下した決定をすべて書き出してみてほしい。そのほとんどに、非対称的なペイオフが潜んでいるだろう。たいていは、一方の決定の影響のほうが、もう一方より大きいはずだ。人は確率の大小ではなく脆さに基づいて決定を下している。言い換えれば、「正しい」「正しくない」ではなく、脆さに基づいて主に決定をしている。
原発の例などは非常にわかりやすいですし、一時期一部から非難されていた「原発が安全だというのであれば、なぜ安全対策しているのか。安全ではないから安全対策をしているのではないか」という問いに対する回答そのものではないかとも思います(私がごく身近な例としてイメージしたのは、外出時に火元確認する、というしょぼいものでしたが)。
そして、この考え方は特に領域を制限されることなく、あらゆる場面で応用可能ではないか、と思いました。
翻って、北朝鮮リスクです。個人的にはこのまま空爆や戦争に突入する確率は低いと考えていますが、もしそのような事態に陥った場合、株価は一時的に暴落し、為替も円高に向かうと思われます(円安になると主張する向きもあります)。
タレブのいう、「確率ではなく脆さに基づいて決定する」という観点で今後の投資方針を考えてみます。
日本株式(現物)
現物に関しては比較的ディフェンシブな銘柄で組まれたポートフォリオではありますが、市場全体の下げに対してその影響を受けることは必至です。そのような意味では株式は北朝鮮リスクの顕在化に対して「脆い」と言えるかもしれません。
ただし、資産全体に占める株式の割合は現状高くありませんので、持ち株を処分するほどに「脆い」かというと、そこまでではないと考えます。ここは保守的に行動して、持ち株はそのままだが新規にポジションは持たない、というのがベターな選択と考えます。
日本株式(信用)
一方で、信用取引の買い建て玉については、ややポジションが膨らんでいますので暴落に対するダメージは大きいと想定しています。相当暴落しない限り、追証が発生することはないと思いますが、例えばリーマンショック級の暴落やそれを超える暴落が起きた場合はこの限りではありません。
そして、北朝鮮リスクが顕在化した際に起こる暴落の規模は、現時点では、わかりません。つまり、信用ポジションは暴落に関しては「脆い」可能性があります。リーマンショック級の暴落が起きたとき、その影響に耐えることのできないほどのポジションを持っているとすれば、深傷を追う前に損切りするのが懸命、ということになります。
なお、現時点の信用ポジションとしては、そこまで大きくはありませんので、ひとまず、これ以上ポジションを増やすことはしない、というのが結論でしょうか。
為替・米国株
為替に関してはFXをやっているわけではなく、米国株購入用のドルキャッシュをせいぜい50万円程度のレベルで持つだけですので、多少円高に振れてもそれほど大きな影響を受けるわけではありません。
つまり、私程度のドルキャッシュポジションであれば、為替リスクに対して脆くありません。従って、108円前半から中盤あたりで少額をドル転するのは問題ないと判断します。米国株も為替の影響を受けますが、日本株(現物)同様、ディフェンシブ銘柄中心でポジションもあまり大きくありませんので、影響があっても許容範囲と考えています。
ただ、これも日本株同様ですが、このタイミングで敢えて新規に買い向かう必要はない、と考えます。
まとめ
タレブの考え方を応用しなくても素直に考えれば、いまは手を出さないのが懸命な相場であるのは自明とも考えられますが、改めて「脆さ」という観点から判断すると、
・現物は現状維持。ただし新規には買わない
・信用取引は深傷を追いそうなら早々に損切り
・為替のドル転は少額ならOK
ということになります。現物の話以外は、平時の立ち位置とあまり変わらないかもしれません。
北朝鮮リスクについては、何事もなかったかのように平和的解決されるのが望ましいですが、しばらくはこの感じが続くのでしょうか。